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デリバティブ特集①「仮想通貨にデリバティブ市場は必要?」

2019年07月24日 

#マーケット特集 /

国内外問わず、機関投資家による仮想通貨市場参入に関するニュースが報道されている。そんな中、SBI北尾氏は日経新聞と金融庁共催の「FINSUM2018」に登壇した際、機関投資家に新たな取引機会を提供するためにも仮想通貨のデリバティブ市場の創設の必要性を述べた。実際、SBIホールディングスは仮想通貨デリバティブ関連事業を展開する米国BCauseビコーズ社への出資を行なっている。今後、仮想通貨市場においてデリバティブは必要とされるのか、機関投資家が参入するためにはなぜデリバティブ取引が必要なのか、そのような疑問について解説していきたい。

一般的にデリバティブ取引と聞くと、仕組債やスワップ取引による巨額損失など紙面を賑わせるワードが思いつく。しかし金融機関をはじめとする機関投資家はデリバティブ取引を通じて様々なリスクをコントロールしている。日本銀行の「デリバティブ取引に関する定例市場報告」日本分集計結果(2018年6月末)によると、日本国内において為替・株・金利・コモディティを原資産とするデリバティブ取引において約7,200兆円(フォワード取引、金先・先物取引、スワップ取引を除く)もの取引が行われている。

作成:Cryption 出所:日本銀行「デリバティブ取引に関する定例市場報告」日本分集計結果(2018年6月末)を参照

2016年の東京証券取引所における1日の株式売買代金の平均が3兆円であり、2,400営業日(約9.8年)に相当する取引高といえば、いかに大きな市場かということが理解できる。銀行をはじめとする金融機関は保有する資産に介在する為替リスクや金利リスク、クレジットリスクをコントロールする為、オプション取引を用いてリスクヘッジを行なっている。なぜなら幾度となく世界で発生してきた金融経済危機の教訓から、世界各国の中央銀行が出資して発足した国際決済銀行(BIS)のバーゼル合意(BIS規制)において、特に国際的に活動する銀行の監督指針や自己資本比率にかかる厳しい規制を設けており、市場リスクのリスク量が大きくなればなるほど相応の自己資本を積む必要があるからだ。その規制を元に各金融機関は自社の自己資本比率の高さ(安全性)をうたっている。裏を返せば、リスクヘッジのできないアセットは取引の対象とすることが難しいのだ。機関投資家が暗号資産として取引参入するためにはヘッジ手段の構築が必要不可欠である。

 では、仮想通貨市場において金融機関以外にもデリバティブ取引を必要とするプレイヤーは存在するだろうか。まず思いつくのはマイニンング事業者だ。(マイニングについての説明は省きたい)毎月のマイニングにより得られる仮想通貨は、ディカルティ(難易度)による変動もあるが、ランニングコストの支払いや人件費などの販管費において法定通貨での支払いが必要となる為、採掘通貨自体の価格変動による採掘報酬の増減に悩まされることとなる。世界中のあらゆる場所、場面でビットコインでの支払いが可能となる世界であれば問題ないが、電気代などの固定費は法定通貨で支払わなければならない。その為、毎月採掘量が変わるうえに、採掘通貨自体の変動にも対応しなければならない。その場合、オプション取引を使うことによって、毎月必要な法定通貨分を固定する事も可能となる。また、仮想通貨交換業(取引所)も仮想通貨間取引の場合、仮想通貨建の取引手数料となるが、オプション取引により、ある程度法定通貨建の収益を固定することが可能となる。

ここまではデリバティブ取引の市場参加者について述べてきたが、次にデリバティブ取引が仮想通貨市場に与えるメリット・デメリットについて考えてみたい。

まずは1番目のメリットとして「価格形成機能の向上」がある。足元のビットコインの相場を例に挙げると、あくまでも投機的な参加者が多いのは否めないが、足元のニュースの善し悪しによって日替わりで相場が形成されている。オプション取引や先物取引価格が形成される事によって、マーケット参加者の将来的予想値が集約される。またオプション取引においても行使価格とボリュームの分布により、参加者が現時点で将来価格をどの程度予想しているのか、など効率的に需給などの情報を収集することができ、単一の現物市場だけでは成し得なかった複合的な価格形成により市場全体を成熟させる効果があると言える。

作成:Cryption データ: DeriBIT 2018年12月28日行使日、行使価格分布図

2番目は「取引の多様化」だろう。2000年以降、デリバティブ市場の発達に伴って個人や一般企業にも仕組債やクーポンスワップの形でデリバティブ取引が浸透していった。その後、歴史的な円高局面やリーマンショックなどの金融危機のタイミングでオプションの売り手として参加していた個人や一般企業が甚大な損失を被ったのは記憶に新しい。とはいえ、単に仮想通貨を保有するだけでなく、預金や債券と連動した商品を組成したり、将来的に仮想通貨の価格を固定した取引など、様々な形態の取引が可能となる。また、現物を保有することなく、参照資産としてビットコインを用いるというような事も可能となり、さらに取引参加者を取り込める市場となるに違いない。

 

デリバティブ取引には、上記の2点をはじめとして市場機能の発達や、参加者の増加により価格変動は安定する面もあるが、デメリットとして価格の変動を助長する側面もある。例えば、行使価格が多く集まった価格に現物の価格が到達した場合、オプション等の状況によっては売りが売りを呼ぶ急落の展開となったり、または価格上昇を大きく抑える展開となる事も考えられる。また取引の多様化により、特に個人がオプションの売り手となった場合、想定外の損失を被る事も考えらる。過去にもデリバティブ金融商品でも同様の事が発生し、その度に販売体制の見直しやコンプライアンス体制について見直しを迫られてきたことはいうまでもない。

 

デリバティブ取引はメリット・デメリットの両面を持ち合わせているが、仮想通貨が今後「暗号資産」として、アセットクラスの一部として広く取引され、本格的に機関投資家の参入を促すためには必要不可欠な分野だと言える。現在は欧州や米国で一部サービスを開始している企業があるが、そのサービス状況についても今後解説していきたい。

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